これぞ日本の建築遺産【中山道妻籠宿建築研修】~ひとりごと-其の18~

当社の建築研修として、先日スタッフの和出君と長野県の妻籠宿に行ってきました。

施工中の可児市の「行雲流水の家」の現場に行っている間に岐阜方面の建築を見に行こう、ということになり、
妻籠宿でしたら、少し寄り道すれば行けるところでもあるので、思い切って行ってみたという次第です。

これまで、昔の街並みを保存した妻籠縮や馬籠宿のことは、何度か目にしたり、聞いたりしたこともありましたが、
実際に行ったことは無かったので、「日本の家をつくる」とうたっている私たちとしては、日本建築の遺産である
妻籠縮という古き良きものから学び、再度私たちの設計を見直す機会になればと思いました。

ここで妻籠宿を簡単にご紹介いたします。
妻籠宿は古くから江戸と京を結ぶ中山道の69次のうち、江戸から数えて49番目となる宿場町です。
中山道は山深い木曽路を通ることから木曽街道とも呼ばれていました。
妻籠宿は、中山道と伊那街道が交叉する交通の要衝として江戸時代においてはかなり賑わいをみせていました。

時代が変り明治になり鉄道や道路が新たに造られ、宿場としての機能を失った妻籠宿は衰退の一途をたどりました。
やがて昭和になり経済成長の中、江戸時代の宿場の姿を色濃く残している街並みが見直され、
この妻籠宿において、全国に先駆けて街おこしという意味合いも含めて保存運動が起こりました。
妻籠の人たちは町並みを守るために家や土地を、「売らない・貸さない・こわさない」という3原則をつくり、
ここで生活しながら、江戸時代の街並みという貴重な財産を後世に伝えてきたことで、現在の妻籠宿があります。

今回妻籠宿を訪れ、日本建築の造形や技術の奥深さに改めて圧倒され、本当に来て良かったと思いました。
ひとつひとつの建物において、「これぞ日本の美」というデザインがふんだんに使われ、そしてそのデザインを形づくる
ための大工をはじめとする職人の技術が至るところで発揮され、庶民の美意識と文化の力強さを強く感じました。

どこに行っても、素晴らしいモチーフだらけで、ずっとスマホのカメラを向けていた感じでしたが、ここからは自分自身が
良いなと思った建物や、ディテールを紹介していきたいと思います。


妻籠宿の駐車場から街に入る手前にある小屋です。なんてことはない小屋ですが、そのプロポーションは美しさを感じました。


二階部分が少し張り出しているせがい造りの宿です。2階と1階のボリューム感のバランスがとても恰好良く感じます。


この建物は私の今回のイチオシでしょうか。少し緩い勾配の屋根が綺麗に広がる美しい建物です。
二階の障子が小さめなことがどこか上品さを感じます。


これは公共トイレです。トイレにも門があり、板張りの外壁はとても風情を感じます。


今では見ることのない石置屋根。ここではしっかり保存されていました。


屋根が浮いている蔵。今でも十分通用するような恰好良いデザインです。


低い下屋のラインがとても美しい建物です。


縦垂木と横垂木の組み合わせでできた屋根?だと思います。横垂木のほぞを破風に通して留めています。


今回は気軽に行った建築小旅行でしたが、今後も続けていきたいと思います。
馬籠宿や京都も行ってみたいですね。