紙からはじまる家づくり

家づくりは「紙」に描くことから始まります。

お客様のご希望は、間取りや外観デザインをはじめ、工費に関することなど、まさに多種多様です。そこでまず、住まい手が思い描く暮らしをしっかりとお伺いし、頭に浮かんでくる家族の「暮らしの場面」をスケッチでラフに「紙」に描いてみます(ゾーニング)。そしてそれを実現する為の家のかたちを何度も試行錯誤しながら、手描きで「紙」にまとめ、間取りやデザインを含めたプランとしてご提案します。
するとこれまで、住まい手が頭の中だけでおぼろげに思っていたことが、具体的に紙の上にひとつの形として表現されることで、はっきりとイメージができるようになります。
その後は住まい手の想いを大切にしながら、少しずつ、細かく、そして具体的に詳細図や施工図という形で「紙」に描いていくことで、住まい手と設計者、そして職人まで共通の思いのもと、家づくりを進めていけるようになります。

住宅設計への想い

“家族が家族らしく”過ごすということは、常に家族の気配を肌で感じながら過ごすということだと思います。私たちは、いたずらにリビングの広さや豊かさにこだわるのではなく、「想いに応える空間」「日々が息づく場所」を育みたいと思うのです。遠い日のささやかな場所にも目を向け、これからを生きる住まいに生かしていきたい。より充実した家族との生活の場の記憶=「場面」をつくることができるような環境や空間を持った住宅が、もっと必要だと思います。

昭和57年、今から約40年前に創業者松井進により設計事務所から始めたサン工房。平成2年には設計施工法人となり、これまで手がけた家は約1,000棟にのぼります。
住まい手の思いとつくり手としてのこだわりを大事に、妥協しない家づくりを心に誓いながら、一邸一邸丁寧に世界にふたつとないオンリーワンの家をつくり続けてきました。

そして令和2年には、浜松で木の家の工務店として認知されつつあった私たちは、新たな挑戦として西三河の岡崎市に「ものづくりの拠点」を構えることにしました。岡崎市は浜松市と同じ徳川家康公ゆかりの地。そして、同じ城下町としての地勢(総合的な土地の状態)や街の構成も似ている、兄弟のような街。隣にはトヨタ自動車のおひざ元の豊田市があり、また名古屋市という大都市も背後に控えます。そのような街で、私たちの信じる家づくりを広めたい!という強い思いを持つ挑戦者として岡崎市に居を構えました。
これからの私たちの地元は、岡崎市です。まだまだ新参者かもしれませんが、岡崎、そして愛知を愛する者として地元に根ざし、地元に貢献できる工務店をこれからも目指し続けたいと思います。

私はものづくりの真髄を父から教わったと思っています。父は私の叔父が経営する土木系の会社に勤めていて、美術大学の建築科の学生だった私は、よくその会社でアルバイトをさせてもらいました。父の側で、コンクリートの構造物や道路舗装の仕事を手伝いながら、ものづくりの大変さ、仕事の達成感、段取りの仕方、素材とその扱い方などを学びました。
美術大学時代は、良き友やライバルにも恵まれ、建築を好きになることができました。あまり真面目な学生では無かった気もしますが、友と刺激し合うことで、建築についてたくさん学ぶことができたと思います。

私の最初の就職は東京の一部上場ゼネコンの設計部でした。バブルがはじける前だったお陰で簡単に就職できた反面、私はこのままこの道で良いのかどうか、将来について大いに悩みました。ゼネコン時代は最初の5年は設計部、そして後の6年は現場監理としての経験を積み、悩みながらの毎日でしたが、本当に良い上司や仲間にも恵まれ、設計ノウハウや、現場について広く学ぶことができました。

そして、そのころから私は住宅という分野に興味を持ちはじめました。大きな事務所ビルやマンションよりも、一戸建てのほうが、最初から最後まで全てに関わることができ、自分に合っていると思ったのです。そして静岡の実家に戻り、最初は地場のゼネコンに勤めていましたが、すぐにサン工房という会社を見つけ、住宅の世界に身を投じることにしました。36才の時でした。

私は住宅業界ではまだ20年そこそこですが、ものづくりの経験、建築に関わる年数としては36年ほどの経験があります。住宅だけでも設計から施工に携わった棟数は100棟以上になります。おかげ様で担当させていただいた家の中において、「静岡県住まいの文化賞優秀賞」をいただいたり「ウッドデザイン賞」を受賞することもできました。

私は建築することが好きです。そして住まい手の笑顔を想像しながら設計をしています。大学時代に父と作業をしたことにより、つくり手の大変さも理解しています。
私たちサン工房岡崎スタジオの理念は「妥協なき情熱あるものづくりがお客様の感動と全てのひとの笑顔を生む」です。私たちのつくる家によって住まい手はもちろん、関わった全ての業者さん、職人さんも笑顔になるような、そんな家づくりをしていきたいと思っています。

そして岡崎・愛知のこの地において、地域に溶け込みながらも、なんかあの家いいね!!と言っていただけるような家づくりをこれからも続けていきたいと思います。

場所の声を聴く

お客様の新居に対するご要望を詳細にお伺いした上で、まずはその敷地にじっくり立ちます。そして近隣の家並みや、周囲の風景、風や光や音を含め、その場所をじっくりと時間をかけて観察します。するとぼんやりと住まい手のご家族のあたたかな家のイメージが浮かんできます。
家の配置や間取りを決めるゾーニングという作業に取り掛かるにあたり、私たちはこの最初のイメージを大切にしたいと常に思っています。なぜならその場所が教えてくれた、つまり「場所の声」を設計のテーマのひとつの源泉とし、それを練り上げしっかりとしたコンセプトを捉えて設計した家は芯の通ったいい家になると信じているからです。

光と風を取り入れる

家造りで大切にしていることのひとつに、「なるべく自然の光や風を取り入れ、健康に過ごす」という考え方があります。昨今、家はその仕様や設備などで計られることが多く、確かに以前よりは快適になっていますが、その一方で、日本の家がずっと培ってきた良い部分を失っているように思えます。深い軒や簾で日射を調整したり、風の抜け道をつくって夏涼しく過ごせるようにしたりと、古来の日本の家には、四季の変化に対応する様々な工夫がなされていました。

私たちは、この様な日本の家の工夫をまずは設計の段階でしっかりと検討し、自然の光や風を取り入れることで快適に過ごせる環境づくりをしたいと考えます。その上で住まうひとのご要望に応じて、より快適に過ごすための設備や仕様をしっかり検討していきたいと思います。

家のプロポーション

プロポーションの意味は、割合、比率、正しい関係、均衡、釣り合い、調和などです。住宅の内部に関して言えば、各部屋の大きさのバランスがいい家が、プロポーションがいい家ということになります。大きい家には大きいなりの、小さい家には小さいなりの部屋の大きさがあります。また家のプロポーションは大きさという観点だけでなく、各部屋の縦横のプロポーションや、建物と庭のプロポーション、外観の縦横のプロポーション、さらには隣戸や街並みとのプロポーションなど、さまざまな視点から考える必要があります。
私たちは住まいの設計にあたり、ご要望をしっかりとお伺いしたうえで、あらゆる角度からバランスがとれた美しいプロポーションを持った家を目指し、何度もスケッチを描くことで熟考と工夫を重ね尽くします。

つなぎ目が生む豊かさ

日本の家の造りや独特の空間も、日本人特有の美意識や暮らし方も、そもそもは日本の気候風土に由来します。室内と室外の間に、縁側や土間、庇下などといった「つなぎ目」となる中間的空間があることだと言われています。
屋内とも言えるし、屋外とも言える、そんな曖昧な空間は視覚的に日本人の美意識にあっているだけでなく、ご近所の人とのちょうどいい歓談の場となるなど、あるべき日本の暮らし方にも適しています。

庭の設計

住まい手にとって庭の役割は子供の遊び場や類焼の防止、またそこに樹木が植えられている場合は日除けや防風など、さまざまなものがありますが、心理的な効果という点では、なんといっても人の心を癒すことでしょう。ではなぜ庭は癒し効果を持っているのでしょうか。それは、花や樹木が、「生き物」だからです。
そして「生き物」とは「時間と共に変化するもの」であり、「うつりゆく自然の象徴」とも言えます。もともと日本人は、自然と共に生きることを善としてきましたし、家の構造も大きな窓(開口部)を設けることで、自然と一体となった暮らしを常にしてきました。
私たちは、家の中からの見え方や樹木への光の当たり方、樹種による樹影の違いなど、庭の表情を形成する要素を徹底して検討し、住まい手の心により響く庭を設計しています。

唯一無二の職人技を生かして

サン工房スタジオのつくる家には、数多くの「職人技」が生かされています。それは先人から代々受け継がれ、時間や風土に磨かれてきた唯一無二の技。そして、この代替のきかない技を受け継ぐのが「職人」です。
一見、簡単そうに見える作業でも実はとても「手」を掛けていたり、微妙なさじ加減をしています。私たちはそんな職人技、手仕事を大事に丁寧な家づくりをしています。