2026/10/02
ほどよい自給自足の暮らしのすすめ
便利さを手放さず、少しだけ「自分でつくる」を暮らしに

物価が上がり、光熱費や食料品など、暮らしにかかるお金を以前より意識するようになりました。
そんななかで、「できるだけ自分たちの手で暮らしをつくりたい」と考える人も増えています。
けれど、「自給自足」と聞くと、田舎に移り住み、広い畑を耕し、薪を割り、電気や水まで自分でまかなうような、少し大がかりな暮らしを想像するかもしれません。
けれど、本当に大切なのは、すべてを自分でまかなうことではないのではないでしょうか。
野菜を少し育てる。
生ごみを土に戻す。
太陽の熱でお湯をつくる。
降った雨を庭に使う。
そんなふうに、暮らしの一部分だけを、自分たちの手に戻してみる。
「ほどよい自給自足」は、今の便利な暮らしを手放すことではなく、自然の恵みをもう一度、暮らしの中に取り戻していくことなのだと思います。
庭に、小さな畑をつくる

まず始めやすいのが、家庭菜園です。
広い土地がなくても、庭の一角に小さな畑を設けたり、プランターでハーブや野菜を育てたりすることができます。
シンケンスタイルは、庭を単なる外構ではなく「家の一部」と捉え、太陽や風、樹木などの自然を暮らしに取り込むことを大切にしています。実際に、庭や畑と家をつなぎ、収穫した野菜を家族で楽しむ住まいも紹介されています。
自分で育てたトマトを朝食に添える。
庭からハーブを摘んで料理に使う。
それだけでも、スーパーで買ってくるだけだった食材が、季節や天候とつながったものに変わっていきます。
育てることは、食料を確保することだけではありません。
芽が出て、花が咲き、実をつける。
その変化を毎日眺めること自体が、暮らしの楽しみになります。
生ごみを、ごみで終わらせない

小さな畑をつくるなら、コンポストも相性のよい仕組みです。
料理をすると出てくる野菜くずや生ごみ。
それを「捨てるもの」ではなく、「土に戻すもの」と考えてみる。
生ごみを土に戻し、微生物などの働きによって分解されたものを堆肥として畑に活用する、食と土の循環を提案しています。
土から野菜が育ち、
野菜を食べ、
生ごみが土に戻り、
また次の野菜が育つ。
小さな庭の中にも、そんな循環をつくることができます。
家の中だけで暮らしを完結させるのではなく、庭や土まで含めて「住まい」と考えてみる。
そうすると、家づくりの見え方も変わってきます。
太陽の光を、電気だけでなく「熱」として使う
太陽光発電も、身近になった自然エネルギーのひとつです。
屋根に太陽光パネルを載せて、電気を自分の家でつくる。
それだけでなく、太陽の「熱」をそのまま利用する方法もあります。
たとえば、太陽熱温水器。
太陽の熱でお湯をつくることで、給湯に必要なエネルギーの一部を自然から得ることができます。
太陽から受け取る「光と熱」を住まいにどう生かすかを重視し、太陽熱を利用して家を暖める仕組みを実践しています。
自然エネルギーというと、つい「発電」を思い浮かべますが、光や熱、風といった恵みを、そのまま暮らしに取り入れる。
そんな発想も大切なのかもしれません。
雨が降ったら、水を貯める
日本には、四季があり、雨も降ります。
その雨を、ただ排水してしまうのではなく、暮らしの中で少し利用してみる。
雨水タンクがあれば、庭の草木や家庭菜園の水やりなどに活用できます。
水は「買うもの」だけではなく、「空からいただくもの」でもあるのだと気づかされます。
その土地の水を知る、井戸という選択
さらに、敷地の条件によっては井戸水を利用するという方法もあります。
地下にある水を生活の中で利用することで、その土地がもともと持っている資源を暮らしに取り込むことができます。
もちろん、井戸はどの土地でも同じように利用できるわけではなく、水質や水量、設備などを確認する必要があります。
だからこそ、家を建てるときには「どんな家を建てるか」だけでなく、「この土地には何があるのか」を知ることが大切です。
太陽はどこから昇り、どこに沈むのか。
風はどのように抜けるのか。
雨はどこに集まるのか。
庭にはどんな植物が育つのか。
土の中には、どんな水があるのか。
土地をよく知ることは、その土地と上手につきあうことにつながります。
「自給する」ことより、「つながる」こと
自給自足という言葉から、何でも自分だけでまかなうことを想像する必要はありません。
むしろ、
少し育てて、
少しつくって、
少し蓄えて、
少し土に返す。
そのくらいが、今の暮らしにはちょうどいいのかもしれません。
単に便利さを減らすことではなく、自然の恵みを受け取り、自分の手を動かしながら暮らす「愉しさ」です。家を建てることを暮らしの完成とせず、その後の暮らしまで含めて考える姿勢が、そこにはあります。
家の完成は、暮らしのスタート。
庭で野菜を育てる。
木陰でお茶を飲む。
雨水を庭に撒く。
太陽の熱でお湯をつくる。
採れたものを食卓に並べる。
そうした小さな営みが、家と自然、人の暮らしをゆるやかにつないでいきます。
便利なものをすべて手放すのではなく、
自然にあるものを、少しだけ暮らしに借りる。
「ほどよい自給自足」。
これからの住まいを考えるとき、そんな暮らし方もひとつの選択肢になるのではないでしょうか。