設計作法
2026/04/25
【心地良さの追求】~木の家設計作法-其の564~
私たちが良く使う言葉に「心地良さ」という言葉があります。では「心地良さ」とは、どういう状態なのでしょうか。
私たちのいう「心地良さ」とは、空間またはそれに付随する要素において、気持ち良かったり、不快に感じないことをいうのだと思います。
そして、明るさ、暗さ、温熱環境、高さや広さ、色、素材、匂いなど「心地良さ」を感じる要素はたくさんあります。
それらがどれかひとつでも良くないと感じれば、「心地良さ」を感じる空間にはなりません。
よって、私たち設計者は、住まい手が感じる要素のひとつひとつに細心の注意をはらう必要があります。
真の心地良さを生み出すための、主要な設計アプローチを整理しました。
1. 自然との共生
人間が本能的に求める「自然とのつながり」を住まいに取り入れます。
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視線の抜けと緑の配置: 窓の外に植栽を配置し、室内から常に緑が見えるように計画します。特に、リビングやダイニングの視線の先に「アイストップ」となる樹木を置くことで、空間に奥行きと静寂が生まれます。
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光と影の演出: 均一に明るい空間よりも、時間帯によって変化する自然光や、柔らかな陰影がある空間の方が、人は落ち着きを感じます。
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自然素材の採用: 触れた時の温度感や香りが心地よい無垢材、調湿効果のある塗り壁など、経年変化を楽しめる素材を選定します。
2. 身体的・心理的な「溜まり」の構築
広すぎる空間よりも、適度に囲まれた落ち着ける場所(居場所)を点在させることが重要です。
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天井高のメリハリ: 開放的な高天井の横に、あえて天井を低く抑えたヌック(こもり部屋)や書斎を設けることで、心理的な安心感を生み出します。
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「間」の設計: 通路や玄関など、移動のための空間に余裕を持たせ、季節の花を飾るスペースやベンチを設けることで、心のゆとりを演出します。
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平屋的(ワンフロア)な繋がり: 生活動線を水平に集約することで、家族の気配を感じつつも、無駄な上下移動のないストレスフリーな暮らしを実現します。
3. 熱環境と空気の質
目に見えない要素こそ、長期的な心地良さを左右します。
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安定した室温: 高気密・高断熱をベースとし、夏は遮熱、冬は蓄熱を意識したパッシブデザインを取り入れることで、家のどこにいても温度差のない環境を作ります。
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静音性の確保: 外部の騒音を遮るだけでなく、室内の生活音が響きすぎないよう、間取りや仕上げ材で音のコントロールを行います。
4. 外部空間との連続性
室内だけで完結せず、外と中が曖昧につながる設計が開放感をもたらします。
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中間領域の活用: 縁側や深い軒下、ウッドデッキなどの「中間領域」を設けることで、雨の日でも外の空気を感じられ、生活圏が外へと広がります。
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内と外の素材の連続: 室内の天井材をそのまま軒裏まで伸ばすなどの手法により、視覚的に境界をなくし、空間を広く見せます。
設計の核心 心地良さとは、その場所で「何をするか」だけでなく「どう感じるか」という、住む人の情緒に寄り添うことで完成します。季節の移ろいや光の移ろいを繊細に捉える設計が、飽きのこない住まいを生み出します。
私たち作り手は、ともすればつくることに専念してしまいがちですが、「心地良さ」を追求することを忘れないよう設計していきたいと思います。
サン工房スタジオ代表:袴田英保

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