【自然と共生する住まい】~木の家設計作法-其の363~
自然に対して抵抗したり、堅固に身を守ろうとした西洋文化に比べ、
日本の文化は、自然に対して受け入れたり、従ったりしながら、柔軟に対応したのが日本文化です。
特に高温多湿な日本の夏に対して、それは顕著に現れています。
日本の伝統的な建具で簾戸(すど)というものがあります。
ごく簡単に言うと簾(すだれ)をはめ込んだ建具のことで、別に夏障子とも呼ばれています。
衣類の衣替えと同様、六月になると障子や襖(ふすま)のかわりに取り替えて、暮らしを夏向きに整えるのです。
簾が強い光を遮ってくれるため、室内は涼しく、簾の隙間から入る風はゆるやかに吹き抜け、
目にもすがすがしい風情が一層涼しさを感じさせてくれます。
「続・歴史が生きる家」(同じ敷地に多世帯で住む家・夏障子がある家)
中から外の景色は見えますが、外から室内は見えません。
採光と通風を確保し、プライバシーも守ることができます。
このように簾戸は、夏の暑さと上手に付き合う知恵と、
日本人ならではの情緒を感じる、世界に誇れる日本の伝統文化です。
現代の私たちの住文化は、どちらかというと数値に捉われ、季節に対して抵抗するものなりつつあります。
確かに温度変化が少ない環境のほうが快適で健康的に住めるのかもしれません。
しかし日本人である私たちは、簾戸の文化のように、
季節を受け入れながら生活することも忘れてはならないような気がします。
なぜなら、時には厳しく、時には優しい日本の自然を受け入る中で、
私たちは日本人の心と文化を育んできたと思うからです。
私たちはこれからも現在の技術と素材を使い、快適さを追い求めながらも、
日本人の心と文化を忘れないような、
現代の「日本の家」を、つくり続けていきたいと思います。
代表 袴田英保
「松樹千年翠の家」(想いを継ぐ平屋・農家住宅) 詳しくはこちら