【アプローチは気持ちの通り道】~木の家設計作法-其の384~
アプローチは外から家の中へ人を導く通路のことですが、
単に通路という物理的な面だけでなく、
人の心持ちにも影響を与える精神的な意味も持っています。
お寺や神社の参道や茶室に続く露地がまさにアプローチであることを考えれば、その役割がよくわかります。
アプローチは外と内を結ぶ継ぎ目であり、
日本的な言い方をすれば、「間」のようなものだからです。
道路や街並みといった公的な空間と家の内部というきわめて私的な内部の中間にあり、
時間の切り替えが行われる重要な場所です。
「行雲流水の家」(既存の庭の改修・二世帯住宅) 詳しくはこちら
家族が帰ってくる時に緊張を解き、外の顔から家の顔へと戻るところもアプローチですし、
訪れたお客様が他所の家の私的空間に入っていく心の準備が行われるのもアプローチです。
また道往くひとに対しては、その家らしさをさりげなく伝えるメッセージ的な役割も担っています。
「松樹千年翠の家」(昔の家の面影を残す家・夏障子のある家) 詳しくはこちら
私たちは、家の設計にあたり、そんなアプローチの持つ重要性を認識し、
家族が家へ帰って来た時に緊張を解く場だったり、
お客様が他者の私的空間に入る前に心の準備が行われる場としてのアプローチについて、
「曲げる」「ずらず」「止める」など様々な工夫を凝らすとともに、
できれば家の顔としての清々しさや趣が出るように検討を重ねたいと思っています。
代表:袴田英保