2026/10/16
収納は多ければいい?
整理整頓しやすい家は、収納の「量」より「使い方」

「収納は多いほうが安心」
家づくりでは、そんな考え方になりがちです。
確かに、収納が多ければ「何かあったときにしまえる」という安心感があります。
けれど、収納は多ければ多いほど暮らしやすくなるのでしょうか。
実は、収納のつくり方によっては、かえって物が増え、整理整頓や掃除を億劫にしてしまうことがあります。
奥行きが深すぎる収納は、使いにくい
例えば、奥行きの深い収納。
たくさん物を入れられる一方で、奥に何が入っているのか分からなくなりやすい。
手前の物をどかさなければ、奥の物を取り出せない。
すると、いつしか「とりあえず入れておく場所」になってしまいます。
複雑な造作や、手の届かない場所にある棚も同じです。
最初は便利そうに見えても、使い続けるうちに整理しにくくなり、埃も溜まりやすくなります。
収納は、単純に「たくさん入ること」よりも、
見える。 届く。 取り出せる。 戻せる。
ことのほうが大切です。
「何かあったときのため」が、物を増やす原因になることも
収納がたくさんあると、
「いつか使うかもしれない」
「何かあったときのために」
と、物を手放すきっかけも少なくなります。
収納できてしまうから、捨てなくてもいい。
そして、収納の奥にしまったまま、存在を忘れてしまう。
結果として、家の中に物が増えていきます。
だからこそ、収納は「とにかく増やす」のではなく、自分たちの暮らしに必要なものを、必要な場所に収められる量を考えることが大切です。
ただし、必要な場所には「おおらかな収納」を

収納を少なくすればいい、ということでもありません。
むしろ、用途がはっきりしている場所には、思い切って大きな収納を設ける。
これが、とても使いやすい方法です。
例えばキッチン。
パントリーを別につくる代わりに、キッチン背面を大きな収納として計画する。
扉で隠せるようにして、その内部には作業台や可動棚を設ける。
家電、食器、食品、ストック品など、キッチンで使うものをまとめて収納します。
必要なところには、引き出しも造り付ける。
毎日使うものは、毎日使う場所の近くに置く。
「使う場所」と「しまう場所」を近づける。
用途が決まっている収納なら、大きくつくっても無駄になりにくいのです。
収納は「暮らしの動作」から考える

収納計画で大切なのは、収納量だけではありません。
朝、何を取り出すのか。
帰宅したとき、何をどこに置くのか。
料理をするとき、どこから何を取り出すのか。
洗濯物をどこにしまうのか。
掃除道具はどこにあると使いやすいのか。
こうした一つひとつの暮らしの動作を考え、そのすぐ近くに収納を設ける。
収納を「物をしまう箱」と考えるのではなく、暮らしをスムーズにする仕組みとして考えることが大切です。
目が届く収納は、物の量もコントロールしやすい

収納が見やすく、何がどこにあるのか分かれば、物の量も自然と把握できます。
同じものを買い足してしまうことも減ります。
「これはもう使っていないな」と気づくこともできます。
つまり、使いやすい収納は、単に片付けるためだけではなく、物を増やしすぎないための仕組みにもなります。
整理整頓しやすい家は、掃除もしやすい
物が適切な場所に収まっていれば、床にも物が散らかりにくくなります。
床に物がなければ、掃除機やほうきも使いやすい。
収納の奥に物が詰め込まれていなければ、埃も溜まりにくい。
つまり、整理整頓と掃除のしやすさは、別々の問題ではありません。
物の居場所をきちんとつくることが、掃除のしやすさにもつながります。
「収納が多い家」より「暮らしが整う家」
大切なのは、収納を増やすことではありません。
必要なところには、十分な収納を。
用途が決まっている場所には、おおらかな収納を。
一方で、奥行きが深すぎたり、手が届かなかったり、何を入れるか決まっていない収納は増やしすぎない。
そして、使う場所の近くに、使うものをしまえる場所をつくる。
収納は、家の中に物を隠すためのものではなく、暮らしを整えるためのもの。
「何でもしまえる家」ではなく、
「必要なものが、必要な場所に、必要なだけある家」。
それが、整理整頓しやすく、掃除もしやすく、長く心地よく暮らせる住まいにつながるのではないでしょうか。
サン工房では、収納量だけを増やすのではなく、そこで暮らす人の動作や習慣まで紐解きながら、暮らしに合った住まいを考えています。