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コラム

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2026/09/06

「暗くない?」をどう考える?吉村順三先生から学ぶ、照明計画の考え方

「暗くない?」をどう考える?吉村順三先生から学ぶ、照明計画の考え方

「暗くない?」をどう考える?

吉村順三先生から学ぶ、照明計画の考え方

家づくりの打ち合わせで、照明計画をご提案するとき、

「ここ、暗くないですか?」

と聞かれることがあります。

もちろん、暗くて暮らしにくい家をつくりたいわけではありません。

料理をするときには、手元がきちんと見える明るさが必要です。
本を読むなら、文字が読める灯りが必要です。
階段や廊下にも、安全に歩ける明るさが必要です。

けれど私たちは、

「家中を明るくすること」と「心地よい家にすること」は、同じではない

と考えています。

むしろ、すべてを均一に明るくしてしまうことで、家の中から失われてしまうものがあります。

それが、光と影の「陰影」です。


日本の住宅に多い「一灯で明るくする」という考え方

日本の住宅では、部屋の中央に大きな照明器具をひとつ設け、部屋全体を均一に明るくする照明計画が多く見られます。

どこにいても明るい。
どこにいても同じように見える。

それは一見、とても合理的です。

でも、部屋全体を同じ明るさで照らすと、空間から陰影がなくなり、どうしても「のっぺり」とした印象になりやすい。

壁も、床も、天井も、家具も、すべてが同じように照らされる。

せっかく無垢の木を使っていても、漆喰や土壁を使っていても、その素材が持つ凹凸や表情まで平坦に見えてしまいます。

明るければ、豊かな空間になる。

必ずしも、そうではありません。


「必要なところに、必要な灯り」を置く

私たちが大切にしているのは、

一灯で部屋全体を照らすのではなく、必要な場所に必要な明かりを散らす

という考え方です。

たとえばダイニング。

食事をする場所には、料理がおいしそうに見える灯りを置きたい。

テーブルの上に光を集めることで、料理や器が美しく浮かび上がり、自然とそこに視線が集まります。

一方、ソファでくつろぐ場所では、少し重心を下げる。

低い位置に灯りを置くことで、視線も自然と落ち着き、夜の時間にふさわしい穏やかな空気が生まれます。

同じ「明るさ」でも、どこに光があるかによって、空間の感じ方はまったく変わります。


灯りは「暮らしの道具」である

この考え方は、北欧の暮らしにも通じるところがあります。

北欧では、長く暗い冬を過ごすこともあり、家の中の「灯り」を暮らしの一部として大切にしてきました。

部屋全体を明るくするのではなく、食卓には食卓の灯り。

ソファにはソファの灯り。

読書をする場所には読書の灯り。

窓辺や棚の上にも、小さな灯り。

そうやっていくつもの灯りを暮らしの中に散りばめることで、一つの部屋の中にもさまざまな居場所が生まれます。

照明を「部屋を明るくするための設備」として考えるのではなく、

「夜の暮らしをつくるもの」

として考える。

この視点は、日本の家づくりでも、もっと大切にされてよいのではないかと思います。


テーブルランプやフロアランプも、立派な照明計画

照明計画というと、どうしても新築時に取り付ける照明器具のことを考えがちです。

しかし、私たちはテーブルランプやフロアランプ、クリップライトなども、暮らしをつくる大切な「灯り」だと考えています。

たとえば、ソファの横に小さなテーブルランプを置く。

本を読むときだけ灯す。

夜、家族で話をするときには少し明るさを落とす。

必要になったら、クリップライトを好きな場所に移動する。

そうすると、暮らしの変化に合わせて灯りも変えることができます。

家を完成させた時点ですべてを決めてしまうのではなく、

暮らしながら灯りを育てていく。

そんな照明の楽しみ方もあります。


建築の中に「灯り」を仕込む

もちろん、すべてを照明器具で解決するわけではありません。

空間を邪魔しないように、できるだけ照明器具そのものを目立たせず、建築の中に灯りを仕込むこともあります。

たとえば、壁の上部を照らす間接照明。

天井を直接照らすのではなく、壁や天井という「面」に光を当てる。

すると、光源そのものは目に入らなくても、柔らかな光だけが空間に広がります。

これは、素材を美しく見せるうえでも効果があります。

漆喰の壁なら、そのわずかな凹凸に陰影が生まれる。

無垢の木なら、木目や表面の質感が自然に浮かび上がる。

土壁なら、職人の手仕事による微妙な揺らぎが見えてくる。

照明器具そのものを見せるのではなく、素材を照らす。

それによって、素材が持っている美しさを引き出していくのです。


「器具そのものを愉しむ」という選択

一方で、照明器具そのものをインテリアとして楽しむこともあります。

ペンダントライトを一灯、ダイニングテーブルの上に吊るす。

その照明器具が空間のアクセントになる。

家具やカーテン、器と同じように、照明もまた住まいを構成する一つの道具です。

だから、

「目立たせない照明」と「魅せる照明」を使い分ける。

これも照明計画の面白さだと思います。

すべての照明を隠す必要もない。

すべてを器具で見せる必要もない。

その場所に合わせて、光そのものを見せるのか、器具を見せるのか、あるいは素材を見せるのかを考えていきます。


吉村順三先生から学ぶ「灯り」の考え方

こうした照明の考え方を考えるとき、私たちが思い浮かべる建築家の一人が、吉村順三先生です。

吉村順三先生の住宅には、必要以上に家全体を明るくするのではなく、暮らしの中で必要な場所に灯りを置き、光と影によって空間をつくるという考え方が見られます。

特に軽井沢の山荘などに見られる、自然とのつながりや、夜の時間を静かに楽しむための照明のあり方は、今の住宅を考えるうえでも多くのことを教えてくれます。

大切なのは、

「どれだけ明るくするか」ではなく、「どこを照らすか」。

そして、

「どこを照らさないか」。

光があるところには、必ず影ができます。

その影があるからこそ、光が美しく感じられる。


「暗がり」も、住まいの一部

私たちは、暗いところを「照明が足りない場所」とは考えていません。

少し暗い場所があるからこそ、明るい場所が引き立ちます。

ダイニングの灯りに家族が集まる。

ソファの横の小さな灯りのそばで本を読む。

廊下の足元に灯る小さな光を頼りに、静かに寝室へ向かう。

窓の外が暗くなった夜、室内の柔らかな灯りが庭にこぼれる。

そうした光景もまた、「家で暮らす」ということの一部です。

すべてを明るくしてしまうのではなく、あえて少しの暗がりを残す。

その暗がりが、家の中に「余白」をつくってくれます。


「暗くない?」から始まる、照明計画

「暗くない?」という言葉は、照明計画を考えるうえで、とても大切な問いだと思います。

でも、その答えを単純に「もっと明るくしましょう」とするのではなく、

「どこを、何のために照らすのか?」

と考えてみる。

料理をおいしく見せるための灯り。

家族の顔を照らす灯り。

本を読むための灯り。

手元を照らす灯り。

素材の表情を引き出す灯り。

そして、ただ静かに夜を過ごすための灯り。

一つひとつの場所に、それぞれの役割があります。

だからこそ、一灯ですべてを照らすのではなく、いくつもの小さな灯りを暮らしの中に散らしていく。

必要なところには、必要な明るさを。

必要のないところには、静かな暗がりを。


明るい家ではなく、「夜が心地よい家」へ

家づくりでは、昼間のことを考える時間がどうしても多くなります。

窓からどんな景色が見えるか。

どんな光が入るか。

木の質感はどう見えるか。

でも、一日は昼間だけではありません。

家族が帰ってきて、照明をつける。

食卓を囲む。

お風呂に入り、ソファでくつろぐ。

本を読む。

少しお酒を飲む。

子どもが眠ったあと、夫婦で静かに話をする。

家の中で過ごす時間の中には、たくさんの「夜」があります。

だから私たちは、

昼間に美しい家だけではなく、夜も心地よい家をつくりたい。

と思っています。

照明は、家を明るくするためだけのものではありません。

夜の暮らしをつくり、
人の居場所をつくり、
素材の表情を引き出し、
家族が過ごす時間を少し豊かにするもの。

それが、私たちが考える「灯り」です。

「暗くない?」という問いの先にあるのは、

「この家で、どんな夜を過ごしたいですか?」

という問いなのかもしれません。

サン工房・スタジオでは、照明器具を選ぶだけではなく、光と影、素材、家具、そしてそこで営まれる暮らしまでを考えながら、一つひとつの住まいの「灯り」を計画しています。

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