代表ブログ設計作法
2026/08/08
【灯(あかり)の設計】~木の家設計作法‐其の577~
住まいの居心地の良さを決めるとき、間取りや素材と同じくらい、あるいはそれ以上に大きな役割を果たしているのが「灯り(あかり)」です。
日中は窓から差し込む自然光が木肌を優しく照らしますが、陽が落ちてからの住まいは、設計された「灯り」によって全く異なる表情を見せます。
コロナ禍を経て家で過ごす時間の価値が見直された今、夜の時間をいかに穏やかで豊かに過ごせるか。今回は、サン工房・スタジオが考える「灯りの設計作法」についてお話しします。
1. 部屋全体を均一に照らさない「明暗のメリハリ」
日本の住まいは長らく、一室をひとつの大きな照明で均一に明るく照らす「一室一灯」が主流でした。しかし、居心地の良さを追求するならば、部屋全体を明るくしすぎないことがポイントになります。
必要なところに必要な分だけの明かりを配する「一室多灯」の設計。 光が届く場所と、穏やかな陰影が残る場所を作ることで、空間に奥行きと立体感が生まれ、心が自然と落ち着く「籠もり感」や「安心感」が育まれます。
2. 木の素材感を美しく魅せる「低く、柔らかな光」
無垢の木の床や天井、珪藻土や漆喰の壁。自然素材の持つ豊かな質感や美しい木目は、上からの強い光よりも、斜めや下からの柔らかな光によってその魅力を最大限に発揮します。
-
目線より低い位置に置くスタンドライトやフットライト
-
壁や天井に光を反射させる間接照明
光の位置を低く抑えることで、人間の交感神経の緊張がほぐれ、副交感神経が優位になりやすくなります。一日の終わりにリラックスして過ごすリビングや寝室には、こうした「低く柔らかな灯り」が欠かせません。
3. 外の闇とゆるやかにつながる「庭の灯り」
灯りの設計は、室内だけで完結するものではありません。 夜、室内の照明を少し落とし、窓の外のウッドデッキや庭の植栽にほのかな灯りを添えてみる。すると、ガラス面の映り込みが抑えられ、視線が自然と外へと抜けていきます。
ウチとソトの境目が曖昧になり、夜の庭までがまるでリビングの一部のようになる。この「広がりのある開放感」もまた、夜の住まいを楽しむための大切な作法です。
灯りは、暮らしの情緒を深める「素材」
単に「暗い場所を明るくする道具」としてではなく、時間を忘れ、心を静かに満たしてくれる大切な設計要素としての「灯り」。
木の温もりに優しく寄り添う灯りを丁寧にしつらえることで、毎日の「家に帰ってきたときのホッとする感覚」は、より一層深いものになります。
「ただいま」と扉を開けたとき、温かな灯りが家族を包み込む。 そんな、時が経つほどに愛おしくなる夜の居場所を、これからも一つひとつ丁寧に作っていきたいと考えています。
サン工房・スタジオ代表:袴田英保
の家_1.jpg)
「燈灯の家」(ガルバリウム鋼板外壁の家・中庭のある家) 詳しくはこちら

「風光る平屋」(ガレージのある家・屋根がきれいな家) 詳しくはこちら