設計作法
2026/05/02
【格子の役割】~木の家設計作法-其の565~
住宅建築における「格子(こうし)」は、日本の伝統的な建築美を象徴する要素であると同時に、現代の住宅においても**「機能」と「情緒」を両立させる極めて合理的な建具・意匠です。
私たちが大切にしている「安らぎの空間」や「木の家づくり」において、格子が果たす主な役割を整理してみました。
1. 視線のコントロール(プライバシーの確保)
格子は、「外からは見えにくく、中からは外が見える」という視覚的効果を持っています。
-
適度な距離感: 道路や隣家に面した窓に格子を設けることで、カーテンを閉め切ることなく、室内のプライバシーを守りながら外の気配を感じることができます。
-
開放感の維持: 壁で仕切ると閉鎖的になりますが、格子であれば視線が抜けるため、空間を広く感じさせる効果があります。
2. 光と風の演出(環境制御)
自然素材を活かした住まいにおいて、光と風の管理は重要です。
-
光のフィルタリング: 直射日光を和らげ、室内に美しい「光と影のストライプ」を描き出します。時間とともに変化する影の形は、空間に情緒的な豊かさを与えます。
-
通風と防犯の両立: 窓を開けて風を採り入れたい時、格子があれば防犯性を高めつつ、心地よい風を通すことが可能です。
3. 空間の緩やかな分節(仕切り)
壁を作らずに、空間の用途を緩やかに分けたい時に格子は重宝されます。
-
透過性のある間仕切り: 玄関とリビングの間や、階段室との仕切りに格子を用いることで、家族の気配を感じさせつつ、空間の境界線を明確にします。
-
奥行き感の創出: 格子の向こう側に庭や別の空間が見えることで、視覚的な奥行きが生まれ、豊かな空間構成になります。
4. デザインのアクセント(意匠性)
木の質感を生かした格子は、建物全体を引き締めるデザイン要素となります。
-
垂直・水平ラインの強調: 格子の連続する細いラインは、和モダンな外観やインテリアに繊細さと端正な印象を与えます。
-
素材感の強調: 木材(杉や桧など)を使用することで、手触りや香りと共に、温もりのある住まいを演出します。
設計者としての視点
「豊かな小住宅」や「緑のある暮らし」を提案される際、格子は「内と外を繋ぐ中間領域」を彩る名脇役となります。
庭の緑を格子の隙間から切り取って見せる(借景)手法や、夜間に室内からの光が格子を通して外へ漏れる「行灯(あんどん)」のような美しさは、周辺環境に対しても優しい景観を提供します。
住宅設計において格子は、単なる装飾ではなく、日本の気候風土と日本人の美意識に基づいた知恵の結晶といえるでしょう。
このように格子は日本の風土や文化にとても適しており、日本文化を表現するデザインの代表格です。
私たちはこれからも格子を、現代の日本の家の設計に上手に取り込みたいと思っています。
サン工房・スタジオ代表:袴田英保

「月こよひの家」(格子スクリーンのある家・夫婦ふたりで住む家