【美しい軒のつくりかた】~木の家設計作法-其の402~
建物において軒はとても重要な役割を担ってくれます。
ひとつは窓から入る日射を調整してくれることであり、または雨や紫外線の直射から家を守ってくれることです。
今回は、そんな軒の機能上の重要な役割とは別に、違う側面での軒の役割を少し述べたいと思います。
機能面以外の軒の役割・・・
それは外観における美観上の役割です。
皆さんも京都や保存された宿場町など町家が並ぶ街並みを美しいを思ったことがあると思います。
その美しさを醸し出している要素としてはいろいろあると思いますが、私はその中でも軒の造形や低い軒が並ぶことによるものがとても大きいのではと思っています。
妻籠宿(2021年12月撮影)
そんな大事な軒について、私たちは基本プランを考える段階から高さや構成の仕方などをしっかりと考えていきます。
そして実施設計においては、矩計図によってミリ単位で寸法の検討をします。
基本的には高さの違う軒を少なくして、なるべく高さを揃えたいと思っています。
機能面も考慮しながら、なるべくシンプルにまとめるのがコツです。
「行雲流水の家」 (低く抑えた軒と大屋根が特徴の家 詳しくはこちら
しかしながら、当然これは平面計画、断面計画とも密接に絡むことなので、簡単にはいきません。
何度も何度もスケッチを重ね、バランスの取れた合意点を見つけなければなりません。
あくまでこれは外観上のことですので、あまり強引にそれを重視しすぎてしまうと、内部の間取りや空間が崩れてしまう可能性もあるので注意が必要です。
そのような作業を経てできた軒は、何も考えないで間取り優先でできた軒に比べて必ず美しくなると私は確信しています。
これからも、そんな地道な作業の積み重ねによって、「あの家なんかいいね」というような見返り美人のような「美しい日本の家」を造っていけたらいいなと思っています。
代表:袴田英保
「舘山寺の長屋」(軒の高さが揃った方形の家) 詳しくはこちら