設計作法
2026/06/19
【住宅は建築の基礎】~木の家設計作法-其の571~
街を歩けば、洗練された商業ビルや、圧倒されるような美しい公共建築に出会うことがあります。しかし、私たち建築に携わる者が常に胸に刻んでいる、ひとつの言葉があります。
「住宅は、すべての建築の基礎である」
これは、コルビジェやミースなど近代建築の巨匠たちもこぞって口にしてきた真理です。
ではなぜ、数ある建築の中でも「住まい」がすべての土台と言われるのでしょうか。
理由はとてもシンプルです。住宅には、人間が生きるための「最小限にして、最も大切な営み」がすべて詰まっているからです。
暮らしの「心地よさ」を測る、ものさし
ご飯を美味しく食べる、心地よく眠る、家族と語らう、ふと庭の緑を眺めて一息つく……。 住宅設計とは、これら日常の何気ない一コマ一コマを、いかに豊かに、いかにストレスなく包み込めるかという挑戦の連続です。
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人がいちばん落ち着く、天井の高さはどれくらいか。
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格子を透過して入る光は、暮らしにどんな陰影をもたらすか。
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素足で触れる杉の床は、季節ごとにどんな温もりを伝えてくれるか。
こうした、人間の身体に寄り添った繊細な感覚(ヒューマンスケール)や、自然の調和を学ぶ場所こそが「住宅」なのです。どれほど規模の大きなビルであっても、そこで過ごすのは同じ「人間」です。家づくりで培った「心地よさのものさし」がなければ、人を優しく包み込む空間は決して生まれません。
ひとつの家から、豊かな街並みへ
私たちは日々、住まい手の方の「感性に響く空間」を目指して、木を組み、素材を吟味しています。
住宅は、ただの雨風をしのぐ箱ではありません。お引き渡しをした後も、家族の成長とともに味わいを増し、何十年と引き継がれていく人生の舞台です。
その小さな一軒の家が、中にいる人を癒やし、外を行き交う人にも美しい佇まい(緑や格子の風景)をおすそ分けする。その積み重ねが、やがて美しい街並みをつくっていきます。
建築の基本は、いつも「一軒の家」から始まります。 だからこそ私たちは、これからもこの「建築の基礎」である住まいづくりに、真摯に、そして誇りを持って向き合っていきたいと思います。
サン工房・スタジオ代表:袴田英保

舘山寺の長屋
「舘山寺の長屋」(寄棟の平屋・方形の家)