家づくりでとても大事なこと【快適さをつくる】~木の家設計作法-其の355~
現在、日本の家は、ひとつの大きな転換期を迎えているといっても良いのではと思います。
それは、地球温暖化、脱炭素に向けた国の政策転換の元で、我々住宅業界における省エネ化や断熱化の施策によるものです。
直近では、4月1日より品質確保促進等に関する法律(品確法)に基づく日本性能表示基準の一部改正がありました。
少し難しい基準のお話しですが、これまでの省エネ基準は国が定める地域区分のうち、
ここ6地域においては、等級4 UA値(家の熱損失量の平均値=外皮平均熱貫流率0.87以下)が最高等級でしたが、
新たに等級5 UA値(外皮平均熱貫流率0.60以下 ZEH強化基準程度)が最高等級として新設されました。
そして、それにとどまらず、3月25日には、国土交通省と消費者庁は、10月からはその上をいく断熱等級として、
等級6,7をスタートさせる旨を官報に告示しました。
等級6はUA値は6地域において0.46以下、等級7は0.26以下というかなり高性能な性能値の設定です。
このような制度の新設により、今後はヨーロッパ並みの省エネ、断熱性能を有する家が少しづつ増えていくことになると思われます。
弊社も当然、その流れを無視することなく、より高性能で快適な家を目指し、省エネ及び断熱性能、気密性能を高めていくことになります。
しかし、そこで私たちが忘れてはならないのは、私たちは当初からずっと言ってきたように、
日本の気候、そしてこの地域の気候に合った「日本の家」を作っているのであり、
何が何でも性能数値を上げたり、ヨーロッパの基準に合わせれば良いという訳ではないということだと思います。
そして性能を上げる=コストが上がることでもありますので、
あくまで住まい手に対して性能を上げるメリットを納得していただくことがとても大事かと思います。
南北朝時代の随筆家、吉田兼好は鎌倉時代に徒然草で「日本の家は夏を旨とすべし」と言っています。
それだけ、日本の夏は高温多湿で、どのようにすれば、それらを防ぐことが出来るのかがとても大事なこととされてきました。
そして、日本の家は様々な工夫を施し、厳しい夏の季節を少しでも和らげる工夫を施してきました。
仕様や設備で性能を上げることにより、確かに数値的には快適になるでしょう。
しかしそれらにに頼り、性能値を上げることで全てが快適になる訳ではないと私たちは考えます。
夏は夕方涼風を入れたり、冬は日中なるべく日照を入れ暖める。
軒や庇の出を検討することで日射を調節したり。
大きな窓を設置することで、開放感を味わったり、庭の景色を愉しむことも潤いのある生活には大事なことでしょう。
性能の数値も大事なものだと思いますが、それだけに囚われないで、
私たち日本人の五感に訴えるような感覚や感性に訴える設計をすることもとても大事なことだと思います。
そのようなことを忘れないで、この大きな転換期の中で、より快適な家づくりを目指し、
新たな日本の家づくりに取組んでいきたいと思います。
代表 袴田英保
「燕居の家」(格子塀のある家・切妻屋根の家) 詳しくはこちら