【緑は生活必需品】~木の家設計作法-其の559~
住まいづくりで大事なことはいろいろあります。
その中でも、プランにおいていつも必ず考えていることのひとつに、どこで緑(植物)との接点を設けるかということです。
庭の効能のところでも述べましたが、緑(植物)は「生き物」であり、変化し、住まい手の心を癒してくれます。
そんな「緑は生活必需品」と考え、プランの検討の時には必ず、庭の植栽の配置や見え方まで考えています。
住宅の設計において緑は生活の必需品
かつて、住宅における「庭」や「植栽」は、余裕があれば検討する、いわば「仕上げのオプション」のように扱われてきました。
しかし、現代の住宅設計において、緑は単なる装飾ではありません。
それは、住まいの性能を補完し、住む人の心身を整えるための「不可欠なインフラ」であると言えます。
境界を曖昧にする「視覚的効果」
都市部の住宅では、限られた敷地の中でいかに開放感を得るかが課題となります。
そこで、リビングの窓越しに配置された一本の樹木が重要な役割を果たします。
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奥行きの創出: 視線が室内の壁で止まらず、外の緑へと抜けることで、物理的な面積以上の広がりを感じさせます。
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プライバシーの保護: カーテンを閉め切るのではなく、枝葉が緩やかに外からの視線を遮ることで、光と風を取り込みながらも安心感のある空間を作ります。
暮らしを調律する「機能的役割」
緑は、優れたパッシブデザインのパートナーでもあります。
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環境のコントロール: 夏には落葉樹が強い日差しを遮って木陰を作り、冬には葉を落として温かな陽だまりを室内に届けます。
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心地よいリズム: 風に揺れる葉の音や、季節ごとに変わる葉の色は、単調になりがちな現代の生活に豊かなリズム(1/fゆらぎ)をもたらし、ストレスを軽減させることが科学的にも証明されています。
「手入れ」という名の豊かな時間
「手入れが大変だから」と緑を敬遠する声もありますが、植物に水をやり、成長を愛でる時間は、デジタルな日常から離れて「自分を取り戻す時間」になります。
設計の段階から、キッチンに立ちながら緑が見えるか、お風呂に浸かりながら中庭の木々を眺められるかといった「緑との距離感」を計画することは、住まいの質を決定づけると言っても過言ではありません。
結論
住宅は、単に雨風を凌ぐ箱ではありません。
窓の外に広がる緑の揺らぎがあって初めて、家は「安らぎの場」へと完成します。設計の初期段階から緑を計画に組み込むこと。
それは、未来の自分たちへの、最も価値ある投資の一つなのだと思います。
サン工房・スタジオ代表:袴田英保

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