【窓に映る風景を設計する】~木の家設計作法-其の546~
私たちはプランを考える時、窓に映る風景を必ず考えます。遠くの景色、庭の樹木、坪庭、芝生…
良い風景もあれば、時には見たくないものもあります。
窓に映る風景がどんなものかは、家の居心地を決める大事な要素です。
なんでも取り込めば良いというわけではありません。
しっかりと設計で検討をしないと、庭が見える窓をつけたはいいけど、
前の道路を散歩する人と目が合ってしまい、結局、窓を開けられない…なんてことにもなりかねません。
窓の種類、大きさ、高さ、そこに映る風景をしっかりと頭にうかべながら、細心の注意を払って設計したいと思います。
窓に映る(/見える)風景の設計ポイント
1. 窓を“額縁”として扱う
風景画を飾るように、窓の位置・大きさ・比率で切り取られる景色の印象が大きく変わります。
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横長の窓:パノラマ感、広がりを強調
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縦長の窓:高さや奥行き感を強調
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正方形の窓:静止画のような安定感
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窓の高さ:目線のコントロール(座る位置・立つ位置)
2. 「見せたいもの」と「隠したいもの」を選ぶ
風景をデザインするとは、視線のコントロール。
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見せたい:山、樹木、庭、水面、空
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隠したい:隣家、電柱・電線、道路など
→ 窓のフレームや袖壁、植栽で視界を“編集”できる。
3. 窓に“映り込む”風景のデザイン
外の景色だけでなく、窓ガラスに反射するものも設計できます。
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室内の照明が映る → 夜に幻想的な演出
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室内の木材・家具が外景と重なる → 温かみ
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水盤を置いて反射を増幅 → 風景が二重に映る
※ガラスの種類(透明・反射・Low-E)で印象が大きく変化。
4. 時間による変化を組み込む
風景は1日の光や季節で変わります。これを設計に活用。
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朝日/夕日の入り方
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夏と冬の太陽高度
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風で揺れる植栽の影
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雨天時・雪景色の鑑賞性
窓は“時間の流れるキャンバス”にできます。
5. 内と外をつなぐレイヤー構成
風景に奥行きを出すために、内→外へと段階的な層を作ると効果的。
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室内のフレーム(カーテン、障子、窓枠)
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中間領域(テラス、縁側、庇)
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外部(庭・植栽・背景の景色)
これにより風景が“深く”“豊か”に感じられる。
6. 植栽を使った“視線の誘導”
窓外の風景を自分で設計する場合(庭など)に有効。
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シンボルツリーを窓中央に配置
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低木・苔などで足元の視線の流れをつくる
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奥に向かって間隔を狭める → 遠近感UP
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四季に変化がある樹種を選ぶ
7. 建築と風景を一体化する
窓の役割を「光を入れる装置」から「景色を創る装置」へ。
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コーナー窓で景色を“切らない”
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ピクチャーウィンドウで風景を“固定”
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ハイサイドライトで空だけ切り取る
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屋外と室内の床レベルを揃えるこのようなポイントを踏まえ、魅力的な窓になるように常に窓に何が映るかを意識しながら設計をしたいと思います。

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