【玄関のしつらえ】~木の家設計作法-其の551~
玄関は日々の生活において、身支度をして出て行く場であると同時に、帰宅時に、靴を脱いだり、服を脱いだり、荷物を置いたりする場でもあります。
そして、お客様が見えた時に顔を合わせたり、招き入れたりする場でもあります。
また、玄関は機能としての場という要素だけでなく、内と外をつなぐ場として、気持ちの切り替えが出来る場所でなくてはなりません。
このように玄関には様々な機能が要求されます。
玄関のしつらえは、家の第一印象を決めるだけでなく、住まい手の価値観や暮らし方を静かに語る大切な場面です。
建築・空間の視点から要点を整理します。
1. 迎え入れる「間(ま)」のつくり方
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土間の奥行き
一歩入ってすぐ扉、ではなく半歩〜一歩分の“溜まり”をつくると、気持ちが切り替わります。 -
視線の抜け
正面に壁を立て、横や斜めに庭・中庭・坪庭への抜けをつくると、奥行きと期待感が生まれます。
2.素材で語る玄関
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床(土間)
モルタル金ゴテ、洗い出し、三和土風、石貼りなど、外部との連続性を意識。 -
壁
塗り壁・左官・板張り・和紙など、触覚的な素材が効果的。 -
天井
低め+木質で包む/高め+間接照明で静けさを演出します。
3. 光のしつらえ
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自然光
地窓・高窓・スリット窓でやわらかく導く。直射より「反射光」が上質な空間になります。 -
照明
ダウンライト一灯より、-
壁を照らす間接光
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飾り棚を照らすスポットの重ね使いが玄関らしい陰影をつくります。
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4. 収納は「見せる」と「隠す」
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隠す収納
大容量の土間収納で生活感を排除します。 -
見せる収納
飾り棚に-
花
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季節の設え
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器・アート
などを一点だけ置くと、玄関が“場”になります。
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5. 建具・ディテール
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造作建具
框戸・格子戸・引き戸は、玄関の格を一段引き上げます。 -
金物
取手・丁番・照明器具は小さいけれど印象を左右する要素。素材を揃えると品が出ます。
6. 外部とのつながり
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アプローチ → 玄関 → 室内が一連の体験になるように
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足元の素材を連続させる
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植栽の影を玄関に落とす
など、外構と一体で考えるのが理想です。
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まとめ
玄関のしつらえは「広さ」よりも「構え」「光」「余白」が大事です。
豪華である必要はなく、静かで、少し緊張感があり、気持ちが整うことが大切です。
まずは物がしっかり収納できたり、靴や服が、無理なく脱ぎ着できるというような機能面を考えながら、
朝日が入る窓を設けたり、飾り棚に花や絵を飾ることで、気持ちの切り替えやお客様への配慮というような、
心理面に対するしつらえも同時に検討していかなくてはならないと思います。
サン工房・スタジオ代表:袴田英保

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