【軒の役割】~木の家設計作法-其の541~
私たちは軒の出を大きく出す設計が多いかと思います。
なぜなら軒にはたくさんの役割を担ってくれるからです。
今回はそんな軒の枠割りを皆さんと一緒におさらいしてみたいと思います。
① 雨や日差しから建物を守る(防御機能)
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軒は屋根を壁より外へ張り出させた部分で、雨だれや直射日光を防ぐ役割を持ちます。
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雨が直接外壁に当たるのを防ぎ、壁や建具の劣化を遅らせる効果があります。
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夏は日射を遮り、冬は太陽光を室内に取り入れるよう、軒の出の長さを工夫することで快適な室内環境をつくれます。
② 室内環境の調整(気候調和機能)
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日本のように四季の変化が大きく、湿度も高い気候では、
軒が通風や日射コントロールの役目を果たします。 -
夏:強い日差しを遮り、涼しく保つ
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冬:低い角度の太陽光を取り込み、暖かさを確保
➡ 「軒は自然の調整装置」とも言えます。
③ 建築の表情をつくる(美的・意匠的役割)
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軒の深さや角度は、建物の印象を大きく左右します。
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深い軒:落ち着き・陰影・重厚感
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浅い軒:軽やか・現代的
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特に日本建築では、「軒の出と陰影」が美の要素とされ、
『陰翳礼讃(いんえいらいさん)』のような美意識にもつながります。
④ 構造的な保護(建物寿命の延伸)
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軒は雨水の侵入を防ぐことで、
木造建築の柱や梁を長持ちさせる働きもあります。 -
長い軒がある家は、外壁や建具の劣化が遅く、結果的に建物の寿命が延びるのです。
⑤ 人の居場所をつくる(中間領域の形成)
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軒下は「内」と「外」をやわらかくつなぐ半屋外空間。
→ 縁側や土間、濡れ縁などの「人がたたずむ場所」を生み出します。 -
風や光、雨音を感じながら過ごせる空間として、
日本人の生活文化と深く関わっています。
いかがでしたでしょうか。
上記は主に軒の機能的な役割を述べておりますが、それ以外にも単純に包まれる安心感というとものもあるでしょう。
やはり軒は大事だと思います。
サン工房・スタジオ代表:袴田英保
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