【季節を取り込む】~木の家設計作法-其の539~
「季節を取り込む設計」とは、四季の変化を暮らしの中で感じられるように、光・風・緑・素材・空間構成などを工夫する設計手法のことです。
日本の気候風土に根ざした考え方であり、「自然と共に暮らす」文化を住まいに反映するものです。
私たちは設計において、まず最初にすべきこととして、敷地の短所や長所を冷静に見ながら、季節を取り込む要素がないかを把握します。
「季節を取り込む設計」は以下のような観点で整理できると思います。
春:光と風を迎える設計
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南面の開口部を大きく取り、やわらかな春光を室内に導く。
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引き戸や縁側を介して、春風を通す。
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庭木の芽吹きを室内から楽しめるように、リビングやダイニングを配置と窓の配置を検討する。
夏:涼を感じる工夫
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深い軒やすだれ・簾・格子で直射日光を遮る。
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通風経路を計画し、南北に風が抜けるような窓配置。
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水や影の要素(坪庭・打ち水・植栽の陰)で体感温度を下げる。
秋:光と実りを味わう
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西日を受ける窓からの夕陽や紅葉の景色を意識した開口。
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素材の陰影(木・土・紙など)でやわらかな秋の光を表現。
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食卓から庭を眺める構成で、収穫や自然の恵みを感じる。
冬:温もりをつくる
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日射取得を考慮した南面の開口と熱の逃げにくい断熱設計。
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囲炉裏や薪ストーブ、畳の床など、ぬくもりを感じる素材。
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内と外の連続性(雪景色を借景にする大窓など)で静けさを味わう。
通年を通しての考え方
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軒・庇・格子などの「半屋外空間」で季節の移ろいを感じやすくする。
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植栽計画:落葉樹は夏に日陰を、冬に日射を取り込む。常緑樹は防風・目隠しに。
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素材選び:経年変化する自然素材(木・漆喰・石)で時間の流れを感じる。
季節を取り込む設計とは、快適性だけでなく、「暮らしの情緒」や「自然との対話」をつくる設計です。
それは単に環境対応ではなく、心の豊かさを育む住まいのデザインといえるかと思います。
私たちは、単純に住まいの間取りを考えるだけでなく、このような心が豊かになる自然との関係も常に意識して設計をしています。
サン工房・スタジオ代表:袴田英保

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