【格子のはたらき】~木の家設計作法-其の534~
日本の家、特に町家などの表構えにおいて、格子は様々な役割を担ってきました。
その中でも日本人が好んで格子を用いたのは、内と外をつなぎながら隠すということができたからだと思います。
街行く人や近所の人を遮断するのではなく、隙間から少しだけ垣間見れることにより、寄りやすくなる。
そんな働きが格子にはあります。そこには、社会や地域との関わりの中で生きてきた日本人の心持ちが宿っているのではないかと思います。
格子(こうし)の働きは、日本建築において非常に多様で、機能性と美しさを兼ね備えています。
主な働きは以下の通りです。
1. 視線の調整・目隠し
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外からの視線を和らげ、室内のプライバシーを保ちつつ、内側からはある程度外の様子を感じ取れる。
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完全に遮断するのではなく、「見える/見えない」の中間領域をつくる。
2. 通風の確保
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格子は風を遮らずに通すため、昔の日本家屋においては夏の涼を得るために重要な役割を果たした。
3. 採光の調整
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直射日光を和らげ、やわらかな光を室内に取り込む。
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格子の幅やピッチによって光の表情が変わり、時間や季節によって陰影が移ろう。
4. 防犯性
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開口部を設けながらも、外部からの侵入を防ぐ抑止効果がある。
5. 美観・景観形成
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格子のデザインは街並みや建物の印象を形づくる要素。
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京都の町家に代表されるように、連続する格子が街並みの調和を生む。
6. 内外の曖昧な境界をつくる
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格子は、内と外を完全に隔てず、**半屋外・半屋内のような「間」**を生み出す。
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心理的な奥行きと豊かさをもたらす。
私たちもそんな格子の働きを意識して、格子を用いていきたいと思います。
サン工房・スタジオ代表:袴田英保
「サン工房・岡崎スタジオ」(2021年4月撮影)