【素晴らしい日本の建具】~木の家設計作法-其の502~
日本の家の素晴らしさは、たくさんありますが、その中でも建具の工夫や技術は本の当に素晴らしく感動すら覚えます。
障子、襖、簾障子、千本格子戸・・・ 改修工事などで、昔建てられた日本の家の建具を見ると目を見張るものばかりです。
日本の建具は、機能性、美しさ、職人技が見事に融合した伝統的な建築要素です。
そんな日本の建具の魅力をいくつかの観点からご紹介したいと思います。
1.細やかな職人技
日本の建具は、精緻で繊細な作りが特徴です。建具職人は、何世代にもわたる技術を受け継ぎ、手作業で仕上げます。
この精密な技術によって、建具は耐久性が高く、細部まで美しく仕上げられています。
特に襖(ふすま)や障子(しょうじ)の作り込みは、技術の高さがうかがえます。
2.自然素材の使用
日本の建具は、木材を中心に作られており、自然の風合いや温かみを感じることができます。
木の質感や色合いは、時間とともに変化し、経年美を楽しむことができる点が魅力的です。
例えば、ヒノキや杉など、特定の木材はその香りや耐久性でも評価されています。
3.機能性と美しさの融合
建具は美しいだけでなく、実用的です。たとえば、襖や障子のように、必要に応じて空間を仕切ったり開放したりすることができ、生活のスタイルに合わせた柔軟性があります。
また、引き戸や障子の滑らかな開閉の仕組みは、使用感もよく、現代でも人気があります。
以下に代表的な建具の種類とその特徴を挙げてみたいと思います。
・障子(しょうじ):和紙を張った木枠で柔らかい光を通しながらプライバシーを守ることが出来ます。
・襖(ふすま):和紙や布を張った引戸で部屋の仕切りとして良く使われます。絵や模様が描かれることもあり、インテリアとしての魅力もあります。
・欄間(らんま):壁の上部に設けられる装飾的な透かし彫りの板。通風と採光のために設置されてきました。
4.可変性と空間との調和
日本の建具は、必要に応じて開閉できるため、フレキシブルな空間づくりが可能です。
例えば襖を外せば広い空間になり、閉じれば個室として使用できるため、限られた空間を有効活用できます。
また障子や襖は、部屋を仕切るだけでなく、光を柔らかく取り入れることができ、室内を自然光で明るく保ちながらも、
視覚的には広々とした印象を与えます。これにより、狭い空間でも開放感を持たせることができます。
5.季節感の表現
日本の建具は、季節の変化に応じてデザインや仕立てを変えることができます。
例えば、桜の花模様が描かれた障子や、夏に涼しげなデザインの襖など、季節ごとの景色や気候に合わせた美しい表現がなされています。
6.簡素さと禅的美
日本建具の特徴的な美しさには、「簡素さ」があります。
余計な装飾がないシンプルで洗練されたデザインは、禅的な美意識にも通じ、精神的な落ち着きや安らぎを与えてくれます。
特に、和室に使用される建具は、空間をシンプルに保ち、居住者にリラックスした環境を提供します。
日本の建具は、伝統と現代が融合した美しさを持ち、住まいに深い味わいと豊かな心地よさをもたらしてくれるものです。
いかがでしょうか。
これまで培われてきた建具職人の技によってつくられた日本の建具は、単なる仕切りや扉ではなく、
空間を豊かにし、自然との調和を活かした優れたデザインと機能を持ち合わせています。
私たちサン工房・スタジオは伝統技術を受け継ぐという観点だけでなく、
現代の日本の家に要求される住みごこちや機能性に対しても適応できる木製建具を
一邸一邸丁寧にデザインしながら今後も日本の建具をつくり続けていきたいと思っています。
サン工房・スタジオ代表:袴田英保
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